海の手記

報告と記録

そんな風に、自分をいじめないであげて。 そうやって切なく、かなしい気持ちになったあと、それが自分の所為であることを思い出す。 また間違えた。 何度目かの間違いは、きっと取り返しのつかないものになる。

旅行

ずっと生きていたいと考えて、あるいは考えるように自分を飼い慣らしてきたぼくだけれど、それでも消えてしまえたらと考えたことがないと言えば嘘になってしまう。ぼくにとって青春とは生き長らえてもいい理由を、価値を、ぼくに見出だすための時間でした。 …

音楽

そこには音楽があって、自治が確かに息づいていました。あの空間がすきです。誰もが輝いて見えて、その中に、たとえ不相応だとしても自分がいて。 本番前は相変わらず吐きそうになります。誰にも言ったことがないけれど、音楽に限らず、何かの前にはいつもこ…

恋文

こちらは晴天です。 なんて言葉が、貴女に何らかの感情を喚起させられるようになるくらいには、この街はもう貴女にとって特別でしょうか。みたことのある道、店、風景。そういうものがすこしずつ増えて、いつかこの街が貴女のものになりますように。そう思い…

融解

自らの狭量さ加減に辟易する。傍からみて自分は大層面倒くさい人間であるだろうし、平素通りの鈍感もまるで用をなさないので困っている。感情というものは非常に生理的なもので、飼い慣らすには理性という手綱はあまりにもか細い。そもそも自分がここまでの…

ふと

本当に自分が気持ち悪くて仕方がない。 声帯を震わせ、口腔から放たれる言葉はまさしく本当な筈なのに、相反するどろどろと粘度を持った感情がいまだ僕の中から消えない。最低な気分。最低な思考。傷つくのは平気だけれど、傷つけるのは嫌だ。僕に起因する何…

ああもうだめだな、と思う瞬間がいつもあります。 僕はもうひとを羨んだり、自分に絶望したりはしたくないのです。自分以外を無能と切り伏せ、自分の蒙昧であることに無知であった頃、間違いなく僕は誰よりも天才だったし、誰よりも神様に近かった。 自分が…

宗教

かみさまがいました。 ああ、彼女は知っている。自身がいくつもの絶望と、神の寵愛の上に立っていることを彼女は知っている。だからあれは儀式だった。彼女はあの場所にいる誰のためにも歌っていなかった。供物は声であり、歌であり、祈りであった。 一途な…

蝶々

愛しい寝息を聞きながら、ふと今なら読めるような気がして、例の本をほんのすこしだけ。美しい筆致で綴られるひとりの女性の物語です。この本は時間をかけて読もうと決めました。まあ僕は元々あまり読むのがはやいほうではないのですけれど。新しい語彙も手…

綺麗

ぼくがこんなにも切なくて、可愛い魔法にかかっていることを貴女は知っていますか。特別美しく、一等淡い、そんな魔法です。多幸感はとても柔らかい感触で、わずかにあたたかく、なみだが出ます。 貴女がつくってくれたぼくという新しい人格が、ぼくはとても…

消えてしまったらと想像するまでに肥大化した自意識を必死に、文字通り全霊をかけて飼い慣らすことに従事しています。創作という行為により一時的に冷却されるそれとの付き合い方を探しているのです。誰かになりたいと言うにはあまりに僕は僕という人格に執…

輪郭

文学ってなんだろう。 文学って人生に必要だろうか。よく「食べ物を食べなければ死んでしまうが文学はちがう。そこが文学のいいところだ」なんて言うけれど、例えば文学(ここでいう「文学」とは文字を媒介とするあらゆる事象、あるいは文字を媒介としない虚…

自由

自分は自由の中にいる。まだ。 自由とははじめから箱の中にあるのです。時間と共に収縮し続ける箱の中で、ぼくたちは徐々に不自由になっていきます。そしてきっと用意される箱の大小は、人によって異なるのです。なりたいという感情は、その箱の中においての…

引力

創ることに取り憑かれている。 悔しい。悔しい。悔しい。 届き得ない領域はいつだって眼前に広がっている。ぼくにとっての敗北の一線は、おそらく誰の目の前にだってある。ぼくの届き得ない領域で、そのまた先と其処とを分ける一線を前に絶望し、それでもま…

崩壊していく。僕はその破片を拾い、もう戻らないのだなと悟る。恥ずかしい。こんな有り様なのに、未だ自尊心のみが高くそびえ立つ精神が恥ずかしい。僕は叩く。殴る。壊れろ、壊れろ、壊れろ。何もできないことなんてはじめからわかっていただろう。つけあ…

想像

この街に来ればなにかが変わる気がしていました。 錯覚だって、幻想だってわかってはいたけれど、それをそのまま捨てるような潔さはぼくにはなく、金星が本当に金色なのか、確かめに行くつもりでこの街に来ました。なるほど確かにここはぼくの思い描いていた…

胡蝶

あなたも、あなたもですか。 やさしくて、やさしくて、世界がつらくて。そんなひとばかりだ。才能の代償に壊れてしまうひとたちばかりだ。音楽があなたを繋ぎ止めているのなら、どうかやめないでほしい。あんなに楽しそうに、それをあなたは承認欲求なんて皮…

改札

私は私という一個の人間が健全に消費されることを望む。私に漱石になることは難しい。宗教は私を救わないからだ。「許してくださる」という文言は、確かに惹句として効果的であるかもしれないけど、私は別に神に許していただきたいわけではないのだから。私…

眠気

精神の寿命は、きっと身体の寿命よりも短い。思考はきっと娯楽だ。生命活動においておよそ不必要な行為だ。人間は考える葦というけれど、おそらく人間は考えるようにはつくられていないのだ。他の動物と同じ。なまじ神に近づいたがために、神様の娯楽に手を…

やめない

自分の強欲さに呆れかえる日々です。漱石は「何も考えていない人の顔が一番気高い」と言ったしTHE NOVEMBERSは「生きていることを忘れても心臓はとまったりしない」と歌った。太宰治は「僕が早熟を装って見せたら、人々は僕を、早熟だと噂した。僕が、なまけ…

にげた

どうして斜に構えちゃうんだろうなあ。どうしてしあわせをそのまま享受できないんだろうなあ。どうしてひねくれてしまうんだろうなあ。始まったなら終わりのことを考えて、どうしてそんな風にしか考えられないんだろうなあ。どうして、どうして、どうして。…

クロードモネ

才能というのは有限であるという説は、才能ある芸術家や学者のほとんどが、十代や二十代でその全盛期を終えるという話からも過去歴史を遡っても存外的外れというわけではありません。一生を天才のまま終える天才など本当に一握りで、中には後世になってその…

あたらしい

何かを愛す資格も、愛される資格も、ぼくにはないものだと思っていました。何かを愛してしまったら、ぼくが触れてしまったら、途端に汚れてしまう気がして。こんな人間だから、愛されるのも許されてはならない気がして。だからぼくは努めて心を鈍感に、誰よ…

創るという行為について、何か思うことがあるとすれば、人はきっと自分の中にある事物しか創造しえないんだろうなということです。美しい人間からはきっと美しい音楽が、詩が、絵画が生まれるし、汚い人間からは汚いものしか生まれないと思っています。それ…

良好

生来ぼくはひとというものが信じられません。人間不信というやつなのでしょう。ぼくの性質上、親しい人間というのは距離が近いことを意味しませんけれど、とはいえそういった親しい人間ですら、果ては家族ですら、その思惑や意図を勘繰ってしまうのです。そ…

宣言

壊れ物に触らないように。 病んでいることに優劣をつけるのはおかしいことだってわかってはいるけれど、病んでいるにも様々な有り様があって、ぼくが好きなのは、自己否定を繰り返して、それでいて自己愛と周囲に守られながら、死にたいと言いながらもなんと…

崇拝

逃げたい。ぜんぶから逃げたいという衝動は、不意に、それでいて慢性的にぼくの精神を蝕みます。ひとりになって、誰にも迷惑をかけず、霞を食って生きていけたら、どれだけ楽かなんて考えては、そんな風になるくらいならば、いっそ死んでしまったほうがいい…

駄文

ぼくはあまり情緒が平素より安定しているほうではないから、日によって気分が大いに異なる。気分が異なれば、食べたいものが異なるし、それは読書でも同じことだ。ぼくは平時数冊の本を並行して読んでいる。暗い本、明るい本、学術書、啓蒙書……。ぼくが見る…

楽しかった?

さいてい

退行

美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい こうして同じ文字列が繰り返されているところを見ると、たとえそれが美辞麗句だったとしてもひとは狂気を感じるのだなと…