海の手記

報告と記録

恋文

こちらは晴天です。
なんて言葉が、貴女に何らかの感情を喚起させられるようになるくらいには、この街はもう貴女にとって特別でしょうか。みたことのある道、店、風景。そういうものがすこしずつ増えて、いつかこの街が貴女のものになりますように。そう思います。
ぼくの大切なものや生活を、ぼくがみせて、貴女はそれを気に入って、こういう行為をきっと交感と呼ぶのだろうな、とふと思い至ります。
今やこの街のどこにでも貴女はいて、でもどこにもいなくてさみしい。淡くゆるやかなしあわせが流れるこの部屋で、ぼくはもう二度目の夜を迎えています。
この三日間も生活に希釈され、撹拌してしまうのでしょう。でもね、ぼくはもうあの本を忘れないし、あのきれいなゼリーを貴女なしで飲んだりは出来ないよ。どうかこんなおだやかな日々がずっと続きますように。貴女が泣き虫のままでいられますように。