海の手記

報告と記録

審判

特別にはなれなかった。
ぼくはえらばれなかった。
なににも、なれなかった。
おそらく今なら死ねるだろう。なんとなくそう思う。余生がすべて消化試合へと移り、ぼくはなににもなれなかった自分を許容できやしない。正直に言ってなんの希望も消え失せてしまった。ぼくが死んだらたくさんのひとがかなしむので、死なないことにしているだけだ。あるいは、ぼくには何の価値もないけれど、あえて死にたいとは思わないだけだ。
一日ベッドに横たわっていた。食事も摂らなかった。耳鳴りはひどく、吐き気を何度も催した。自律神経に異常をきたしたのか、なみだが勝手に出たりしていた。ここで薬を用量を無視して服用したり、衝動に委せて自傷したりすれば役満なのだけれど、そんなことをしても何にもならないことをぼくは知っているし、それらの行為をひどく嫌悪しているためしなかった。最早何に対する欲求も関心もわかなくなっている。死なないと決めたなら、ぼくはまた生活を編んでいかなければならないのに、すべてがどうでもよく、無気力に屈した身体は言うことを聞かない。明後日には大事な(最早大事であったかどうかも思い出せない)試験を控えているというのに。こんなのはただの甘えで、なりたいものになれなかった人間なんてごまんといることくらいわかっている。人生は妥協の連続でできている。いくらごねたところで、結果が覆ることもない。だから前を向くべきなのだけど、消化試合にぼくは価値を見出だせない。周囲も、はじめは慰めてくれるだろう。「がんばったのだから仕方ない」「まためざせばいい」でもそうじゃない。今じゃなければ意味がなかった。でもこれはわがままだ。甘えだ。ああ、もう、無理かもしれない。無理無理無理無理無理無理無理無理もうたすけてくださいゆるして、ねえ、
気が触れたら、おしまい。