海の手記

報告と記録

2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

宗教

かみさまがいました。 ああ、彼女は知っている。自身がいくつもの絶望と、神の寵愛の上に立っていることを彼女は知っている。だからあれは儀式だった。彼女はあの場所にいる誰のためにも歌っていなかった。供物は声であり、歌であり、祈りであった。 一途な…

蝶々

愛しい寝息を聞きながら、ふと今なら読めるような気がして、例の本をほんのすこしだけ。美しい筆致で綴られるひとりの女性の物語です。この本は時間をかけて読もうと決めました。まあ僕は元々あまり読むのがはやいほうではないのですけれど。新しい語彙も手…

綺麗

ぼくがこんなにも切なくて、可愛い魔法にかかっていることを貴女は知っていますか。特別美しく、一等淡い、そんな魔法です。多幸感はとても柔らかい感触で、わずかにあたたかく、なみだが出ます。 貴女がつくってくれたぼくという新しい人格が、ぼくはとても…

消えてしまったらと想像するまでに肥大化した自意識を必死に、文字通り全霊をかけて飼い慣らすことに従事しています。創作という行為により一時的に冷却されるそれとの付き合い方を探しているのです。誰かになりたいと言うにはあまりに僕は僕という人格に執…

輪郭

文学ってなんだろう。 文学って人生に必要だろうか。よく「食べ物を食べなければ死んでしまうが文学はちがう。そこが文学のいいところだ」なんて言うけれど、例えば文学(ここでいう「文学」とは文字を媒介とするあらゆる事象、あるいは文字を媒介としない虚…

自由

自分は自由の中にいる。まだ。 自由とははじめから箱の中にあるのです。時間と共に収縮し続ける箱の中で、ぼくたちは徐々に不自由になっていきます。そしてきっと用意される箱の大小は、人によって異なるのです。なりたいという感情は、その箱の中においての…